立春を迎え、暦の上では春ですね。
北陸では春一番が吹いたそうで驚いています。
そんな節目の日、この一年を
こんな心のありようで、と思った言葉が、
「真面目」でした。
「真面目」という言葉は日常的に耳にしますよね。
広辞苑によると
まじめ【真面目】
①真剣な態度・顔つき。本気。
②まごころがこもっていること。誠実なこと。
とあります。
本来は褒め言葉になるのでしょうけれど、
最近は要領が悪く愚直な人……
といったニュアンスで使われるようにも感じ、
常々言葉の意味が気になっていました。
実はこの言葉には異なる意味合いがあるようです。
読みは「しんめんもく」となります。
しん‐めんもく【真面目】
①本体そのままのありさま。本来のすがた。転じて、真価。
②まじめ。実直。「―な態度」
千年程前に生きた中国の詩人、
蘇軾(そしょく)が こんな詩を残しています。
柳は緑
花は紅
真面目(しんめんもく)
柳は緑色であり、花は紅色に咲く
それが当たり前で、自然の姿
その本来の有り様が、真の面目
ということなのでしょう。
ところが私たちは、いつも周りも見て
自分と他人を比較してしまいがちです。
そして周囲と同じくらいであれば人並みと安堵し、
他者よりも勝っていれば優位に感じ、
劣っていれば不十分であると感じる。
しかし、自然は本来の姿でいることを当たり前として
周りの樹木とは違って見せようとか
一輪だけ違う色の花を咲かせようなどとはしません。
その自然の営みこそが美しく、
本来の姿であることが尊いのです。
私たち人間も、いまの自分で十分で
そこにあなたの真価があるのですよ、
蘇軾の詩にはそんな心が詠まれているように感じます。
新たな年、変容の年を迎え、
これまでの時代では常であった比較や競争という
外向きの意識を内なる自分へ戻す時がきているように感じます。
そして私自身も、「しんめんもく」でいられたらいいなと
そんなふうに感じた立春の一日でした。